曲目/
バーバー/ヴァイオリン協奏曲 Op.14
1. Allegro 10:16
2. Andante 8:30
3. Presto In Moto Perpetuo 4:00
バルトーク/管弦楽のための協奏曲 SZ.116
1. Introduzione: Andante Non Troppo - Allegro Vivace - Tempo I 10:28
2. Giuoco Delle Coppie: Allegretto Scherzando 6:52
3. Elegia: Andante, Non Troppo 8:07
4. Intermezzo Interrotto: Allegretto 4:37
5. Finale: Pesante - Presto 9:19
ヴァイオリン/アイザック・スターン
指揮/レナード・バーンスタイン
演奏/ニューヨーク・フィルハーモニック
指揮/レナード・バーンスタイン
演奏/ニューヨーク・フィルハーモニック
録音/1964/04/27 マンハッタンランター ニューヨーク
1959/11/30 ジョージ・ホテル、ブルックリン
1959/11/30 ジョージ・ホテル、ブルックリン
P:ジョン・マックルーア
SONY 88843013302-02
レパートリーが偏っているのは、今に始まったことではないのですが、恥ずかしながらバーバーのヴァイオリン協奏曲はこのCDで初めて知った曲です。バーバーといえば「弦楽のためのアダージョ」が富みに有名ですが、個人的にはこの作品も映画で知りました。ご存知とは思いますが、1986年の映画「プラトーン」に使われて一躍有名になりました。まあ、古くはジョン・F・ケネディ大統領の葬儀の際にも使用されていたようですが、やはり映画で使用されるとインパクトがあるものです。しかし、バーバーの作品はこれ一曲止まりで、他の作品は聴いたことがありませんでした。このCDはソニーから発売されたバーンスタインの「管弦楽・協奏曲集」のボックスセットの2枚目に収録されているものです。ボックスセットでないと多分聴く機会は無かった曲でしょうね。そういう意味では以前取り上げたコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲も同じです。
ネットで検索すると20世紀の3大名ヴァイオリン協奏曲のひとつという評価もありました。ちなみにその3曲はベルク・コルンゴルト・バーバーなんだそうですが、如何にもがなという気が小生もします。小生としては、これにブリテン、ウォルトン辺りを付け加えたいですね。コルンゴルトは1945年の作品ですが、それ以外は1930年代に作曲されているのは偶然の一致でしょうか?
第1楽章の冒頭から直ぐにソロ・ヴァイオリンが歌うように叙情的な主題を奏でるのですが、それは大見得を切ったり、華々しくテクニックを披露するような感じからは程遠いものです。スターンは多分絶頂期のえんそうで、ロマン的な叙情性をたたえながらも的確なテクニックで切々と曲を進めていきます。バーンスタインも、近代アメリカの作品ということで、作曲家的分析のもと濃厚な表現で好サポートしています。この後に出てくるクラリネットで出てくる主題はリズミックな動きも見せますが、最初の主題の雰囲気を受け継ぐものでもあるように思えます。第1楽章はこの2つの主題によるソナタ形式で書かれていますが、濃厚な表現はどことなくR.シュトラウス的なロマンチシズムを感じます。
第2楽章は弦楽器の短い序奏のあと、オーボエがゆっくりと主題の長い旋律を奏でます。それが弦楽器に引き継がれ、変奏され管楽器も加わり、そのあとにようやく独奏ヴァイオリンが入ってきます。このあたりの展開は何となくラフマニノフを思い出しますね。第1楽章と第2楽章はほとんど同時期に完成していますが、第3楽章は少し送れて完成しています。作曲はスイスで行なわれていたようで、かなり性格が違います。短い楽章ですが、かなり高度なテクニックが要求される楽章で、無窮動で演奏されます。もう一つの言い方でいえば常動曲です。ヨハン・シュトラウス2世の常動曲が有名ですが、常に一定した音符の流れが特徴的な、通常は急速なテンポによる楽曲ないしは楽章を指します。そんなことで、超難曲です。
ソロの切れ味たっぷりの無窮動ぶりが鮮やかな音楽です。曲の委嘱者が難色を示したのも無理ありません。しかし、スターンはいとも簡単に演奏してしまいます。1、2楽章とはがらっと雰囲気が変わりますが、これはソリストの見せ場でもありますし、曲の構成上の盛り上がりの場でもあります。最近の演奏にはドライなものが主流になって来ていますが、このロマンの香りが濃厚な演奏は作品の時代背景にはマッチした名演といえるのではないでしょうか。
ボックスセットということで、普段は絶対カップリングされることのないバルトークの「管弦楽のための協奏曲」がカップリングされています。まあ、コンサートではあり得る組み合わせですけどね。
このバルトークはバーンスタインの1959年の録音です。バーンスタインが正式にニューヨークフィルハーモニックの音楽監督の地位に就いたのは1958年ですから就任間もない録音といってもいいでしょう。この録音は、ディスコグラフィで確認するとコンサートで4回演奏した後で録音されています。当時のバーンスタインの解釈はこうだったという確認が出来ます。この曲の小生のディフェクトスタンダードがピエール・ブーレーズということもありますが、このバーンスタインの演奏は一言でいうとぬるいなぁ、という印象です。
第1楽章の序章からして、かなり緩やかなテンポで始めていますので、冒頭部分などはどちらかというと、ストラヴィンスキーの火の鳥のおどろおどろしさを彷彿とさせます。それも、録音方法にも原因があるのかかなり大きめの音で収録されています。やはり、この年代のバーンスタインはロマンティックな表現をとっていたんですなぁ。ヤングピープルコンサートを積極的に始めていたこともあるのか、各フレーズでの表情付けは解り易いものがあります。
第1楽章の序章からして、かなり緩やかなテンポで始めていますので、冒頭部分などはどちらかというと、ストラヴィンスキーの火の鳥のおどろおどろしさを彷彿とさせます。それも、録音方法にも原因があるのかかなり大きめの音で収録されています。やはり、この年代のバーンスタインはロマンティックな表現をとっていたんですなぁ。ヤングピープルコンサートを積極的に始めていたこともあるのか、各フレーズでの表情付けは解り易いものがあります。
ただ、シャープさには欠けますから、第2楽章の「対の遊び」は少々モタついた音楽のように聴こえます。いつものバーンスタインらしい切れがありません。第3楽章の「エレジー」でも随分緩いテンポのそっけない音楽になっています。ショスタコーヴィチはかなり得意としている作曲家ですから第4楽章は期待したのですが、そのショスタコーヴィチを皮肉っている第4楽章「中断された間奏曲」でも、かなりゆったりとしたテンポで演奏されていて、弦楽器は充分歌わせているのですが、アイロニー的解釈は聴き取ることが出来ませんでした。ようやく最終楽章になって、オーケストラを煽ってちょっとバーンスタインらしさが顔を見せます。最初のホルンのユニゾンは大見得を切った解釈ではじまりますが、後は一直線に猛スピードで突っ走っていきます。まるで、ショスタコの交響曲第5番の最終楽章のような疾走感です。
DGに移籍してからバーンスタインは再録音に積極的に取り組みましたが、どうしたことかこのバルトークに関してはまったく再録音を残していません。ドヴォルザークやヤナーチェクの作品にしてもそうですが、バーンスタインは東欧系の作曲家はあまり得意としていなかったようです。