発行 文芸春秋
誰にでも決して忘れられない歌があります。特に70年代を彩ったフォークソングの数々には、多くの人の想い出がつまっているのではないでしょうか。団塊世代の「卒業」も相まって、現在、新たなフォークソング・ブームが訪れているようです。本書では、南こうせつ、りりィ、NSP、三上寛、山崎ハコ、ビリー・バンバン、なぎら健壱、高石ともや、カルメン・マキ、シモンズ、西岡たかし、友川かずき、小室等の13組15人が登場。それぞれ、「あの頃」と「今」を熱く語っています。代表曲の歌詞も掲載しました。===データベース===
目次 : 南こうせつ/ りりィ/ NSP/ 三上寛/ 山崎ハコ/ ビリー・バンバン/ なぎら健壱/ 高石ともや/ カルメン・マキ/ シモンズ/ 西岡たかし/ 友川かずき/ 小室等
個人的には1994年に放送されたNHKBSの「フォークソング大全集」は今でも大切なお宝なんですが、それ以降日本のフォークブームが再来しているようです。博識のアルフィー、坂崎幸之助をメインパーソナリティーに懐かしのフォークシンガーがそれこそわんさか登場して、懐かしの往年の名曲をスタジオライブで披露してくれました。それ以降同じような企画で、NHKBSでは何度となく特集番組を制作しています。そして、つい最近では2008年にも同様な番組が放送され、その節NHKは「大集合! 青春のフォークソン」としてDVDを発売しました。まあ、これに関連してか、この本は週刊文春2007年8月16.23日号グラビアで「青春!70年代フォーク歌手大全」の特集を組み、そこからスピンアウトして2008年にこの本が出版されています。
まあ、70年代フォーク歌手大全がベースになっているせいか、小生としては少々疑問符が付くアーティストも含まれている様な気がします。これにはフォークの定義付けが大きく関与して居るところで、はからずも、この本ではなぎら健壱が自分の章でそのフォークの定義を解説しています。小生の中でもフォークのカテゴリーは曖昧で、1970年代当初は確かにフォークだったのですが、それが終わり頃になるといつの間にかニュー・ミュージックに置き換わっていくんですなぁ。その辺の変遷は大手レコード会社の仕掛けが絡んでいるようなんですが、フォークという音楽の定義は、聴く人一人ひとりの感性で変わってくるもんなんでしょう。
この本やはり売れ線を狙ってか、トップに「南こうせつ」が登場しますが、これもあまり歓迎したものではありません。そもそもフォーク路線でこういう本を編集するならトップにくるのは「高石友也」でしょう。そして、日本のフォークの大ブームを巻き起こしたフォークルのメンバーの加藤和彦辺りの人選は欠かせないものですし、アングラ系を代表するなら岡林信康、広島系フォークの代表の「吉田拓郎」も外せません。そういう大御所のインタビューが無いのですからちょっと片手落ちの様な気がします。せっかく単行本として発売するのですから、そういう追加取材はあっても良かったのでしょうね。文春は手抜きです。
ただ、個々の内容については、本人だから鹿聴けない話が網羅されていて、それなりに読物としては興味深いものがあります。個人的には西岡たかし率いる「五つの赤い風船」には傾倒していましたから、氏が当時のコンサートは命がけで舞台に立っていたというのには驚かされました。この本には書くアーティストの代表曲の歌詞が掲載されています。もちろん西岡たかしの場合は「遠い世界に」にですが、当時のライブを聴くとこの曲が日本の第2の国家になるんではないか、なんて語っています。まあ、国歌にはなりませんでしたが、今では学校の音楽の教科書に載るほどの曲になっています。
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