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エルネスト・ブールのモーツァルト

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エルネスト・ブールのモーツァルト

曲目/モーツァルト:交響曲選集
CD-1
モーツァルト:交響曲第25、28、29番
エルネスト・ブール(指揮)、バーデンバーデンSWF SO
CD-2
モーツァルト:交響曲第33、35、36番
エルネスト・ブール(指揮)、バーデンバーデンSWF SO
CD-3
モーツァルト:交響曲第38、39番
エルネスト・ブール(指揮)、バーデンバーデンSWF SO
CD-4
モーツァルト:交響曲第40、41番
エルネスト・ブール(指揮)、バーデンバーデンSWF SO

指揮/エルネスト・ブール
演奏/南西ドイツ放送交響楽団

録音/1964-1978

Quadromania 222152

イメージ 1
 

 エルネスト・ブールの名前を知っている人は、主な活躍が1960年代でしたから相当のご年配でしょう。いや、映画音楽ファンなら多分スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」に使われたリゲティの「アトモスフィア」の演奏を聴いているでしょう。この曲を指揮していたのがエルメスト・ブールです。小生もこれでブールの名前を初めて目にしました。ブールは1913年生まれ2001年にストラスブールで没したフランス人指揮者です。ここで指揮をしているバーデンバーデン・南西ドイツ交響楽団の主席を1964年から79年まで務めています。様のリゲティのように、本来は現代音楽が得意な指揮者で、同時代のハンス・ロスバウトやミヒャエル・ギーレンといった指揮者と同系列の存在でした。ただ、近・現代物が振れるということは、そこに繋がる伝統の古典も知らなければいけないという点では、古典を振っても問題は無いはずです。

 モーツァルトの交響曲全集はステレオではカール・ベームが同時代に全集を残していてその評価が高かったものです。小生もその恩恵にあずかったものの一人で、モーツァルトの交響曲はベームで知ったものでした。オケがベルリンフィルということもあり、実にどっしりとした演奏で今にして思えば風格の良い演奏でしたし、まだ、時代はそういうもの要求していたのでしょう。しかし、ここに聴くことが出来るエルネスト・ブールのモーツァルトはちょっと視点が違います。どちらかといえばこの後の、ピリオド楽器や室内楽オーケストラによる演奏の先駆けともいえる、小じんまりとしながらも溌溂とした演奏で、どこか時代を先取りのしているような演奏なのです。

 このアルバムには全部で10曲の交響曲が収録されていますが、もっとた日下録音しています。このセットのクアトロに事よせて4枚分しか収録されていないのが残念です。ここでは交響曲第25番が最初に演奏されていますが、この曲からして演奏がすっと耳に入って来ます。この曲の第1楽章は「アレグロ・コンブリオ」ですから短調ながら「快活に早く」演奏しろとの指示になっています。近年のビリオドの演奏は殆どがこの指示通りです。このブールの演奏もその流れです。ブールの演奏が違うのはフルオーケストラでの演奏という点でしょうか。幾分編成は小さいように聴こえますが、それでも弦は分厚い響きです。そして、これに答えるように4本のホルンがいいバランスで鳴っています。この曲は短調という特徴と4本のホルンが使われているという特徴があるのですが、ブールの演奏はそれを見事なバランスで演奏しています。たぶん、このバランス感覚がこの曲をすっと溶け込ます働きをしているのでしょうか、冒頭から弾き込まれてしまいます。録音はいささか古さを感じさせますが、暫くするとそういうことはまったく気になりません。久しぶりにこのCDを取り出していったい何度繰り返し聴いたことか・・・下の演奏に聴き惚れて下さい。

 

 普通なら25番の次は29番なのでしょうが、ここでは28番も収録されています。えっ、こんな曲もあったのかという再発見をさせてくれたのがこのブールの演奏でした。この曲はティンパニのパート譜が失われた為に長く無しの版で演奏されるのが常で、ここでのブールの演奏もティンパニ無しで演奏されています。ちなみに、ティンパニ入れの演奏はセル/クリーヴランドで聴くことができます。ティンパニ無しではまるでセレナーデのような印象の交響曲になっていますが、手塩にかけたオーケストラは柔軟なフレージングで指揮者に応え、瑞々しい演奏を披露してくれます。


 一つ一つ取り上げていたらきりがないのですが、このアルバムでもっとも感動したのはやはり最後の第41番でした。モーツァルト最晩年の作品は宇宙的規模の広がりをみせ、この天才の魅力が遺憾なく詰め込まれています。]http://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/11163019.html重厚なベームの表現もその一つの答え]で、それはそれで名演です。ブールの41番はベームほど押し出しは強くありません。しかし、キビキビとしたフレージングで音に変化を与え、軽妙さと重厚さを上手くバランスを取って違う角度からこの交響曲の偉大さを示しています。ピリオド演奏ほど音は立っていませんし、ややもするとムードミュージック的な流された演奏の多い中で、音の塗り重ねが緻密で聴いていて目まぐるしく変化するのが心地よい演奏です。まあ、世間でも一時評判になったことは確かですが、小生も手持ちにあったことはすっかりと忘れていたものです。改めて聴いてみて、この演奏、小生の琴線に触れるものがあり、生理的に同化してしまいます。第3楽章なんか、ピリオドアプローチを先取りしているかのようで、聴いているとノンヴィブラートの演奏のようにも聴こえます。

 

 この演奏を聴いて、最近聴いた演奏と色々聴き比べてみましたが、やはりこの演奏が一番しっくりときました。日本ではレコード時代からメジャーで発売されたことは無く、ほぼ駅売りのバーゲン的な扱いでしかないのですが、この演奏は侮れません。ちなみに手元にはこの演奏もう一組あり、こちらはモーツァルトの生誕200年にあわせて発売されたセットの中にこっそりと紛れ込んでいました。CASCADEというレーベルから発売された40枚組の「MOZART PREMIUM EDITION」というセットの中にも含まれていて、こちらではこのクアドロマニアのセットには含まれない21番と31番が含まれています。ただ、CPはこのクアドロマニアの方が高いです。

 エルネスト・ブールは現代音楽の指揮者ということで、一般には余り登場しませんが、このモーツァルトはいけまっせ!!
ちなみに、アマゾンではこの交響曲だけの5枚組を今でも手に入れることが出来ます。

シンフォニーズ~交響曲コレクション【ゴールデン・クラシック5CDシリーズ】
で検索をかければヒットすると思います。



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