発行 立風書房
音(おと)」には理由(わけ)がある。レーベル、録音技術、収録場所、プロデューサーなど名録音を生むさまざまな要素からCDにアプローチ。理想の盤(ディスク)を求めての制作者たちの音楽への熱い思いを聴く。---データベース---
最近200CDに嵌まっています。この本は1998年とちと古い内容です。時代的にはSACDやBlu-ray Discなどはまだ登場していません。ちなみにSACDは1999年にソニーとフィリップスにより規格化されました。そんなことで、ここでの名録音はCDに限定されることになります。そして、名録音はアナログのLP時代からデジタルのCD時代を総括して扱っています。で、ここでいう「名録音」はよい演奏とよい録音ということで、その中でのよい録音に焦点を当てています。つまり、厳選された録音会場、録音スタッフ(エンジニア、プロデューサー、ディレクター)、さらには編集、マスタリング・エンジニア、さらにはプレス技術者といった人的プロセスの総合されたものを指しています。そしてレコードに記録された音は計測データでは測れないこの微妙な差を人間の耳は聞き分けることが出来それがレーベル各社の独自の響きとなっていると述べています。そんなことで、目次には様々な角度からこの名録音に迫っています。目次としては次の内容になっています。
<目次>
1.レーベル別に名録音聴く ――世界の名レーベル
2.技術の粋が名録音を生む ――録音制作のINPUTからOUTPUTまで
3.演奏会場が名録音を生む ――楽器としてのホール
4.名プロデューサーが名録音を生む ――業界の仕掛け人たち
5.ジャンル別に名録音を聴く ――オーケストラから声楽まで
[録音を知るための重要語100]
1.レーベル別に名録音聴く ――世界の名レーベル
2.技術の粋が名録音を生む ――録音制作のINPUTからOUTPUTまで
3.演奏会場が名録音を生む ――楽器としてのホール
4.名プロデューサーが名録音を生む ――業界の仕掛け人たち
5.ジャンル別に名録音を聴く ――オーケストラから声楽まで
[録音を知るための重要語100]
ここで取り上げられているレーベルはもちろんクラシックのレーベルだけです。20世紀のレーベルということで今では消滅してしまったレーベルもあり、小生は懐かしく感慨に耽りながら読むことになりました。そして、別掲では「コンサートホール」や「パイ」レーベルも取り上げられています。
第2章ではSPからLP、CD時代の変遷を代表的録音で簡潔にまとめていますが、やや内容が偏っていて取り上げられているレーベルが一部のものに集中しています。これは著者の好みが大きく出ていて、一般の名録音ものとはちょっと違います。
それよりも、第3章がこの種の企画としては一番充実している内容で読み応えがあります。世界中の録音会場が網羅されていますが、中には普段あまり取り上げられない、スイスのラ・ショー・ド・フォン、フランスのサル・ワグラム、サル・プレイエルなどが取り上げられています。また、教会での録音はコラムに纏められていますが、スタジオ録音にはもう少しページを割いてもよかったのではと思われます。
名プロデューサーが名録音を生むという第4章もいささか内容が偏っていてヨーロッパ系のプロデューサーは数多く取り上げられていますがアメリカ系はほぼ0という内容です。そして、プロデューサーを取り上げるなら同列でエンジニアも取り上げるべきなのでしょうがここではコンビとしての紹介に留まっています。
この本で纏まりに欠けるのは、紹介しているCDが本文の内容といささか一致していない点です。また、紹介CDの曲目が偏っているのは執筆者が12名いるというとで調整が取れていない証拠でしょう。編者がここら辺は調整してもらいたかったものです。ドヴォルザークのチェロ協奏曲なんか5種類も紹介されていますが、ほんとに名録音?と首を傾げるものもあります。ちなみにロストロポーヴィチは一枚もありません。まあ、マニアック度が高いので、巻末の[録音を知るための重要語100]はおまけとしては充実しています。