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琴によるヴィヴァルディの「四季」

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琴によるヴィヴァルディの「四季」

曲目/
Vivaldi: Violin Concerto In E, Op. 8/1, RV 269, "The Four Seasons (Spring)" - 1. Allegro 3:31
1. Allegro 3:31
2. Largo 2:49
3. Danza Pastorale 4:08
Vivaldi: Violin Concerto In G Minor, Op. 8/2, RV 315, "The Four Seasons (Summer)"
1. Allegro Non Molto 4:52
2. Adagio 2:17
3. Presto 3:05
Vivaldi: Violin Concerto In F, Op. 8/3, RV 293, "The Four Seasons (Autumn)"
1. Allegro 5:07
2. Adagio Molto 2:11
3. Allegro 3:46
Vivaldi: Violin Concerto In F Minor, Op. 8/4, RV 297, "The Four Seasons (Winter)"
1. Allegro Non Molto 3:37
2. Largo 2:06
3. Allegro 3:08
Handel: Water Music *
1.Allegro 2:47
2.Air 4:10
3.Bourrée 0:55
4.Hornpipe 1:00
5.Andante Expressivo, Allegro Deciso 7:18
Handel: Music For The Royal Fireworks *
1.Overture 6:34
2.Largo Alla Siciliana 3:44
3.Bourrée 1:43
4. Minuet 3:01

編曲/角田圭伊吾
指揮/三石精一
   福村芳一*
演奏/東京琴ニューアンサンブル
 砂崎知子、森千恵子、花房はるえ、吉村七重、池上早苗、飯吉圭子、木村玲子、宮崎圭子

P:中田基彦
E:池田昭
録音/1977、1979  坂戸文化会館、埼玉

EMI CDM-7690752(原盤東芝EMI)

イメージ 1
 

 春本番という雰囲気ですねぇ。桜前線が関東地方まで満開となっているようで、あちこちで花見客があふれています。そういうこともあって、今日はヴィヴァルディの「四季」を取り上げます。といってもストレートではなく変化球です。日本ですからねぇ、琴で演奏した「四季」です。

 1970年代後期から80年代初期までにヴイヴァルディ、バッハ、ヘンデルなどを集中的に録音していた琴ニューアンサンブルのディスクの一枚です。このシリーズ、レコード時代から珍しいということで全世界向きにも発売されました。日本では別々のアルバムで発売されていましたが、このアメリカ盤は2枚のレコード分を一枚にカップリングした徳用盤として発売されました。ただし、ジャケットの表記がいい加減で指揮者はヘンデルを指揮している福村芳一しか表記がありませんし、日本盤では単に「琴ニューアンサンブル」
という表記だったのですが、このジャケットではわざわざ、最後に「TOKYO」という表記を追加しています。まあ、アメリカでの発売ならではということでしょうね。メインのヴィヴァルディを指揮しているのは三石精一氏で、芸大指揮科の一期生です。一時は読売日本交響楽団の指揮者として活躍していましたが、近年ではアマチュアの育成に力を入れているようで、東京大学管弦楽団の名誉指揮者でもありますね。

 小生の記憶ではこのカップリングでは日本ではCD化されていないと思われます。(ヘンデルは1995/01/25日にCD化され一度発売されている)。このCDはアメリカ、キャピトル社のリリースによる「STUDIO」シリーズの一枚で、アメリカでは結構琴に人気があるようでこのCDは1987年に既に発売されています。これはアメリカのオーディオ雑誌「Stereo Review」が「スリリングで説得力のある演奏」と評価したことでニーズがあったようです。

イメージ 2


 ライナーノートに使用されている写真によるとヴィヴァルディはソロを含めて左側に3台、中央に2台、右側に4台配置されています。ヘンデルの録音には6台の琴が使用されたことが記載されています。当時の琴ニューアンサンブルは4台の琴と17弦の琴2台の編成が標準ということですから、ここでのヴィヴァルディはエキストラを加えての編成なのでしょうか。

 演奏は装飾音は使わず極めてオーソドックスな編曲で左右一杯に広がった琴のサウンドが心地よく響きます。通奏低音を受け持つ琴は中央の2台のようで、これが17弦でしょうか。発弦楽器の琴だけで持続音を維持するためにトレモロを効果的に多用しているのが伺えます。

 「春」は縁起良く明るい音楽、爽快な響き。実に雅やかな演奏です。テンポはどちらかというとゆっくり目で、それがまた、琴の響きとマッチしています。しかもソロが達者で全く軽やか。巧いというか、味わい深いというか。合奏も素晴らしい。ヴィヴァルディの「四季」は、色々なアレンジの演奏が巷に溢れていますが、これだけ聴くと、もともと琴のために書かれたんじゃないかと思うくらい、堂に入った演奏ぶりです。

 

 「夏」は低音が活躍しています。17弦の本領発揮というところでしょうか。激しさが加わって、夏の大雨、夏の嵐のような感じの強い響きが印象的です。軽快優雅だけではなく、切迫感や緊張感が出ています。なかなか表現の幅が広く、聴きごたえがあります。

 四季のある日本にとって、四季の移ろいは音楽でも聴き取りやすいものです。「秋」はものの哀れを感じ取ることが出来ます。第1楽章は実りの秋でしょうか。心弾む宴の感じが感じ取れる楽しげなアレンジです。特に「秋」の2楽章は通常でもピチカート奏法が使用される楽章なので雰囲気的にはいい線を出しています。通常の室内オーケストラに比べて音色の変化にはやや乏しいもののバロック音楽には結構相性はいいように感じられます。聴き様によっては、マンドリン協奏曲の様な響きになっています。このアンサンブルは後にヴィヴァルディの「ごしきひわ」や「海の嵐」などのフルート協奏曲も録音しています。

 「冬」は冷たい音が特徴なのですが、ここではいまひとつその雰囲気が味わえないのが残念です。特に第2楽章の「ラールゴ」はちょっとほんわかムードに流れていてもう少し装飾音を加えても良かったのかなという感じがしないでもないです。こんな感じの演奏ですが、BGMとして聴く分には申し分のない四季になっています。

 一方、福村の指揮するヘンデルの方は、一瞬ハープの音色と聴き間違うほどのアンサンブルが緊密で透明感のあふれる演奏となっています。特に、弱音で奏される水上の音楽の「エア」は、ヒーリング効果もあるようなしっとりとした良い編曲の演奏でつ、い聴き惚れて睡魔に襲われてしまいます(^▽^;)。これに対して「王宮の花火の音楽」はやや華やかな編曲であるのですが、全体に音量を絞り込めば素晴らしい癒し系の響きで心身が満たされます。

 キャピトル盤は1枚で2度美味しいカップリングでこういうものが国内盤で発売されたらきっとヒットすると思うのですが、タワレコ辺りがこのシリーズを再発してくれると外国人のお土産用にもってこいなのではないでしょうかね。

 さて、ここで指揮者を執っている福村芳一氏は最近はアジア各国での活躍が目覚ましく、国内での活動が限られているのであまり話題に上らないのですが、70-80年代は甘いマスクでTVにコンサートに大活躍していたのを知っているだけに、もうちょっと日本の楽団にも登場してもらいたいものです。地元の名フィルの常任指揮者時代には足げく通ったものですが、最近の写真を見る限りでは恰幅も出て貫禄もあるおじさんになったようで興味が湧きます。

イメージ 3


 録音は1000席あまりの中規模のホールなので、適度なシャープさと残響で、琴の響きや消えゆく余韻を楽しめる素晴らしいものです。アナログ末期の暖かみのある録音と言って良いと思います。


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