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バーンスタイン、ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番

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バーンスタイン、ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番

曲目/ベートーヴェン
ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.15
1. Allegro Con Brio 18:32
2. Largo 11:16
3. Rondo: Allegro Scherzando 8:39
ピアノ協奏曲 第2番 ロ長調 Op.19 *
1. Allegro Con Brio 13:01
2. Adagio 9:18
3. Rondo: Molto Allegro 5:35

ピアノ/レナード・バーンスタイン
   グレン・グールド*

指揮/レナード・バーンスタイン
演奏/コロムビア交響楽団*
   ニューヨーク・フィルハーモニック(イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団と誤表記)

録音/1957/04/09,10* コロムビア30番街スタジオ*
   1960/10/24 マンハッタンセンター ニューヨーク

P:ジョン・マックルーア
E:フレッド・ブラウト

SONY 8843013302-06

イメージ 1
 

 バーンスタインのCBS時代の管弦楽、協奏曲エディションの6枚目です。ここからベートーヴェンが始まりますが、彼のディスコグラフィを見ていて不思議なことに気がつきました。バーンスタインはベートーヴェンのピアノ協奏曲全集をまともに録音していないのですなあ。特に第1番と第2番はセッション録音としては意外にもこの録音しか残していません。まあ、予定としてはグールドとの全集録音の企画があったのですけれど喧嘩別れして2-4番だけを録音して終わってしまいました。その第2番も1957年の録音ながらモノラルでしか残されていません。CBS時代にこうだったのでDG時代に全集を残したかと思い気や、こちらも3-5番をツィマーマンと残しただけで全集になっていません。こちらはどうもバーンスタインの死去で全集にならなかったようで、どうもバーンスタインとしてはベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は鬼門であったように思えます。

 ここでは第1番をバーンスタイン自身がピアノを弾いています。ニューヨークフィルとのコンサートでもこの1960年には8月から10月に掛けてプログラムにこの第1番を組み込んでいます。このCDのジャケットにはオーケストラはイスラエルフィルの表記があります。ディスコグラフィを見ていると不思議でなりません。この10月24日にはニューヨークフィルと以下の録音しているのです。

シューマン/チェロ協奏曲
メンデルスゾーン/ルイ・ブラス序曲
ベートーヴェン/レオノーレ序曲第3番
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第1番

 1日でこれだけのボリュームを録音していることになるのです。これからも、セッション録音とはいえほとんど一発録りで収録している様が伺えます。バーンスタインはよっぽどこのピアノ協奏曲第1番がお気に入りのようで、あちこちで弾き振りを披露しています。ツァーでヨーロッパに行った時はベルリンのベルリン・フェスティバルに参加し、新年祭(ユダヤ人新年)でドイツの高校生のためにレクチャーをする特別なコンサートを行なっています。

 よく弾き込んだ上での収録と見えて、なかなか冴えた演奏を披露しています。この時代では弾き振りで収録しているのは珍しいでしょう。そして、テンポもゆっくり目でどっしりとした演奏です。本来はモーツァルトのピアノ協奏曲の延長上の作品と捉えると、もっと軽やかなテンポで演奏するのが一般的なスタイルなのでしょうが、バーンスタインはベートーヴェンの独自性を強調するように第1楽章からスケールの大きい演奏で音楽を作っています。思うに、グールドとの第2番(実質ベートーヴェンの最初のピアノ協奏曲)で、グールドのテンポがあまりにもモーツァルトよりだったので、バーンスタインは俺のベートーヴェンの解釈はこういうテンポでこう表現するのだと主張したかったのではないでしょうか。

 第2楽章はラールゴですから大体標準のテンポです。しかし、ロマン派的な表情を加えて、バーンスタインは詩情豊かにピアノを鳴らせています。3ヶ月以上もオーケストラと弾き込んでいますから阿吽の呼吸も分り合っている演奏なんでしょう。第3楽章は冒頭でいきなりピアノがロンド主題を奏でますが、最初の提示だけバーンスタインはスタッカート気味に演奏しています。譜面上は同じ音形なのですが、ここがバーンスタインのこだわりの様で、晩年のウィーンフィル相手の引き振りでも同じように演奏しています。まあ、この1970年の演奏はちょっとミスタッチが目立ちますが、バーンスタインの魅力で一気に聴かせてしまいます。このニューヨークフィルハーモニックとの演奏ではその辺りのテクニックは完璧で、より完成度の高い演奏になっているように思われます。再録しなかったことを考えると、バーンスタイン自身も納得の演奏になっているのではないでしょうか。下は、ウィーンフィルの弾き振りですが、コンマスにボスコフスキーの顔が伺えます。ボスコフスキー最後のシーズンの演奏ということで貴重ですね。

 

 第2番はグールドとのセッション録音ですが、どう考えてもグールド主体のテンポであり演奏ということがいえるのではないでしょうか。第1楽章は通常13分半ぐらいが標準的な演奏ですが、ここでは12分台で駆け抜けています。この早さ、多分グールドの指定なんでしょう。冒頭からバーンスタインの指揮するオーケストラは疾走しています。でもこの早さ、グールドのピアノはそのころころと転がるオーケストラのテンポをリードするように同じテンポで弾いていきます。録音の裏事情はともかく、レニーとグールド、若い2人にしか出来ない演奏でしょう。今風にいうならば、イケイケどんどんという感じです。ちゃんと疾風怒濤になっているのは、両者ともベートーヴェンの核をしっかり把握しているからなのでしょう。

 第2楽章も早いというイメージはありますがり、演奏時間もほぼ通常の演奏並みの9分前半です。バーンスタインの指揮にはベートーヴェンの持つ雄大さを強調しようという意図が感じられますが、オーケストラがそれに応えきれていない嫌いがあります。臨時編成のオーケストラの弱点なんでしょうかね。グールドはここでは歌うようなピアノで、ベートーヴェンのリリシズムを繊細に表現しようとしています。

 さて、第3楽章になると、待ってましたとばかりに、再びオーケストラのエンジン全開です。この楽章はピアノ・ソロから始まりますが、グールドの演奏も「速く」、それを急き立てるようにオーケストラが勢い良く絡んでいきます。まさしく、丁々発止のやり取りでライブのような疾走感で5分32秒でゴールに突っ走ります。こういうテンポでこの第2番を聴くと、この曲がモーツァルトのピアノ協奏曲の延長上の作品であることが浮き彫りにされます。いままで、あまり真剣にこの第2番の協奏曲と向き合って聴いたことがないのですが、こういう発見ができたのは収穫です。グールドはまさにそれを狙ったのでしょう。

 

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