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トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団演奏会2015

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トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団演奏会2015

演奏曲目

ドビュッシー: 牧神の午後への前奏曲
サン=サーンス: ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 op.61
ムソルグスキー: 組曲『展覧会の絵』(ラヴェル編曲)

指揮トゥガン・ソヒエフ
ヴァイオリン:ルノー・カプソン
トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団

収録 2015年2月21日(土) サントリーホール

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 今年の1月1日にBSフジで放送されたプログラムです。昨年の2月に東芝グランドコンサート2015で同オーケストラは2009年、2012年に続いて来日しました。このプログラムの中で、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番は2012年の来日公演でも演奏しています。その時のヴァイオリンソロはいずれも諏訪内晶子でしたが、今回はルノー・カプソンということで1976年生まれのフランスを代表するヴァイオリニストを同帯して来ました。彼は、T.ブランディス、I.スターンに師事し、クラウディオ・アバドの招きで1992年からグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラのコンサートマスターを務めました。このオーケストラは26歳以下という制限があり、彼はその後ソリストとして世界中の主要オーケストラや指揮者と共演、2002年にはベルリン・フィル、2004年にはボストン響にデビューしています。一方のトゥガン・ソフィエフも1977年生まれということで、実にフレッシュな次世代をになうメンバーでの来日公演と成りました。

 現代の指揮者事情は、スター指揮者がいないということで百花繚乱というよりは、ドングリの背比べという状態です。10年前にはパーヴォ・ヤルヴィやフランツ・ウェルザー=メストといった1960年前後に生れた指揮者たちが新しい才能として注目されましたが、現代においては1970年代生まれ、いや1980年代に生まれた若手に関心が寄せられているといってもいいでしょう。先に記事にしたレコ芸の次世代の指揮者ランキングでは、ソヒエフもそうした若手世代の代表として名を連ねていました。今や伝説的な存在となったイリヤ・ムーシンの門下生であり、すでにトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団に登場してから10年のキャリア(2015年現在)のソヒエフの演奏は、このオーケストラを手中に収めて自信が感じられる演奏会でもありました。

 前任のプラッソン時代から名声を高めて来たトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団ですが、先頃の仏「フィガロ」誌のフランス・オーケストラ番付ではパリ管、パリ・オペラ座管と並んでトップに躍り出ています。昨年の11月6日には、このオーケストラに山田和樹がデビューしています。そちらの映像は下記で見ることが出来ます。プログラムは

・Escaich/Fragments symphoniques tirés de l'opéra 《Claude》
・サン=サーンス/チェロ協奏曲第1番(Edgar Moreau)
・ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲
・ラヴェル/ボレロ

です。


 話しが逸れてしまいましたが、このコンサート収録がフジテレビということで編集が雑でした。まあ、民放のやることですからしょうがないのですけれども、このあと続いて放送された葉加瀬太郎のコンサートは手慣れた編集をしていましたので、やはりクラシックは慣れてないんでしょうなぁ。第1曲はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」です。フルートソロは女性奏者でサンドリン・ティリーです。1974年パリ生まれといいますからこちらも若いですねぇ。パリ・コンセルヴァトワールのフルート科と室内楽を首席で卒業し、いまやフランス・フルート界のホープとして脚光を浴びています。明るい軽やかな音色でアンニュイな雰囲気とは異なるさわやかな牧神を表現していました。初めてコンサートで聴くトゥールーズ・キャピトルOの音色はソフィエフの意向とオーケストラの方向性が合致しているのでしょうか、ドイツ系の重厚さは微塵も無い月並みな表現ですが、如何にもフランスのオケという印象の音色です。

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 これは2曲目のサン=サーンスにもいえることで、カプソンの音色は意外と線の太い音色で、それでいてヴィヴラートたっぷりの歌うような奏法ですが、そこにオーケストラはさらさらとした音色でサポートしています。一見ミスマッチのようですが、これが意外と良いのです。あまりサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲を聴くことは無いのですが、このカプソンの演奏でこの曲の魅力を感じ取ることが出来ました。

 演奏が終わると、余韻も無しにCMが入るので嫌になってしまいますが、ちょうどいいトイレ休憩です。メインはムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』です。ソフィエフの指揮は細かい指示を次々に出して、オーケストラを巧みにドライブします。まさに10年来の信頼の賜物でしょう。音楽の交通整理が巧みで、一見オーバーアクションに見える指揮姿ですが、動きに無駄がありません。ちょっとホルンがバーバヤーガの小屋で音を外しそうになったのはご愛嬌ですが、全体的にはメリハリの利いた演奏で、ソフィエフの指揮は見ていても飽きません。ただ、コントラバスを見ていて分るのですが、ドイツ的なグリップとは違うので低弦の重厚さはちょいと不足しています。この演奏ではありませんが展覧会の絵がありました。

 

 ソフィエフはロシア連邦を構成するキタオセチア・アラニア共和国の生まれですからロシア物も得意としているはずです。ロシア・モスクワのボリショイ劇場音楽監督およびボリショイ管弦楽団首席指揮者、そしてベルリン・ドイツ交響楽団の音楽監督と重要な楽団のシェフも務めています。ネットにはショスタコの交響曲もアップされていますが、次回はこのオケで彼のロシア物を聴いてみたいものです。下はショスタコの交響曲第12番の冒頭です。

 

 二人のペトレンコといい、このソフィエフといい、次世代はロシア系の若者が指揮界をになっていく様な気がしてなりません。



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