発行 日本経済新聞出版社
年頭の日本経済新聞の紙面を飾り、読者の大きな反響を呼んだ、小澤征爾氏の「私の履歴書」が加筆のうえ早くも単行本になりました。今年はサイトウ・キネン・オーケストラ30周年の記念すべき年。世界の音楽ファンを惹きつける毎夏恒例のサイトウ・キネン・フェスティバル松本も、来年からは「セイジ・オザワ松本フェスティバル」と改称されることが発表されたばかりです。この機会にひとりでも多くの、これまでクラシック音楽には縁遠かったという方々にも、ぜひとも読んでいただきたい好著です。
まもなく79歳を迎える現在も世界を飛び回る小澤氏ですが、自伝的エッセイとしては時代を越えて読み継がれる青春冒険物語とも言える『ボクの音楽武者修行』以来、実に半世紀ぶり。斎藤秀雄、バーンスタイン、カラヤンなど生涯の師をはじめ転機に出会った様々な人たちとの思い出を縦糸に、かけがえのない家族への想いを横糸に紡がれる物語ですが、通奏低音として流れているのは音楽に対する飽くなき探究心。世界のオザワの個人的な体験は、普遍的な物語として、必ずや読者に勇気を与えてくれるはずです。---データベース---
まもなく79歳を迎える現在も世界を飛び回る小澤氏ですが、自伝的エッセイとしては時代を越えて読み継がれる青春冒険物語とも言える『ボクの音楽武者修行』以来、実に半世紀ぶり。斎藤秀雄、バーンスタイン、カラヤンなど生涯の師をはじめ転機に出会った様々な人たちとの思い出を縦糸に、かけがえのない家族への想いを横糸に紡がれる物語ですが、通奏低音として流れているのは音楽に対する飽くなき探究心。世界のオザワの個人的な体験は、普遍的な物語として、必ずや読者に勇気を与えてくれるはずです。---データベース---
この本は、日本経済新聞に連載されていた小澤征爾さんの「私の履歴書」をまとめたものです。単行本化に際してのタイトルは「終わらない音楽」となっています。この本の題名は多分、小澤征爾さんの娘さん征良さんが書いた「おわらない夏」という本からとったもののように思えます。小沢氏の自伝的なものには「ボクの音楽武者修行(新潮文庫)」にくわしいのですが、これはそれを補足するものとして読むと面白いでしょう。
この本での新しい発見は、前妻の江戸京子さんとの関係がきちっと読取れることでしょう。また、ブザンソン国際指揮者コンクールで審査員にロリン・マゼールがいたことをこの本で初めて知りました。また、小沢氏はよくシャルル・ミンシュに感化されたと言っていますが、そのミンシュとの接点がベルリオーズの幻想交響曲だったことも再確認出来ましたし、バーンスタインがカナダのトロント交響楽団の常任になる時反対していたということもこの本で初めて知りました。そして、カラヤンとの関わり、バーンスタインとの両巨匠から愛されたたぐいまれな指揮者であったことを実感出来ました。コラム連載でしたから、短い文章で簡潔に纏められていてその人となりがストレートに理解出来ます。コラムには次のようなタイトルが並びます。
満州生まれ/敗戦の日/リヤカーで運んだピアノ/ラグビー少年/桐朋学園音楽科/外国で勉強したい/パリへ/ブザンソン国際指揮者コンクール/ミュンシュと出会う/タングルウッド/井上靖さんの言葉/レニーとニューヨーク・フィル/N響のボイコット/ラヴィニア音楽祭/トロント響/『ノヴェンバー・ステップス』世界初演/妻・ヴェラ/日フィル分裂/斎藤先生逝く/サイトウ・キネン・オーケストラ/コンサート・キャラバン/スラヴァの説得/ボストン響/ウィーン国立歌劇場/これから
履歴書の中で登場する人物の人脈の凄さにびっくりさせられます。財界人では、水野成夫、江戸英雄、笹川良一など、芸術家ではイサム・ノグチ、井上靖、小林秀雄、吉田秀和のなまえがポンポンと飛び出します。なるほど、世に出るためにはチャンスと人脈が大切ということなんでしょう。小沢氏の場合はここには書かれていませんがもう一つマネージメント(CAMI(Columbia Artists Management Inc.))に恵まれたという点も忘れられないでしょう。
この本、活字が大きいので年よりでも読みやすいです。まあ、買うのはもったいないという人は、下記のサイトから新聞連載時のコラムを読むことが出来ます。