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ドラティのシベリウス

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ドラティのシベリウス

曲目/シベリウス
交響詩「ルオンノタール」(ソプラノと管弦楽のためのOp.70) 9:23
交響詩「伝説」Op.9* 18:41
交響詩「夜の騎行と日の出」Op.55** 15:11
交響詩「波の娘」Op.73** 10:08

ソプラノ/ギネス・ジョーンズ
指揮/アンタル・ドラティ
演奏/ロンドン交響楽団

録音/1969/02,1969/08*,1969/06**

東芝EMI EAC‐30353

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 今日は、丁度シベリウスの生誕150年の日ということで、取り上げてみました。彼は1865年12月8日生まれです。これは、アンタル・ドラティ指揮ロンドン交響楽団の演奏で、シベリウスの交響詩4曲を一枚に収めたレコードです。東芝EMIが「北欧の抒情シリーズ」の一枚として発売したものです。80年代初頭の発売で、北欧ときたらやはり熱情ではなく静寂、抒情でしょう。ここで、どうしてドラティかというと、最初の出会いがドラティ指揮ストックホルム管弦楽団の交響曲第2番がシベリウスとの最初の出会いであったからです。それがいきなりシベリウスの交響曲第2番登場したのですからこれは聴き逃せませんでした。当時テイチクから、パイ原盤を使ったシリーズが出ていてバルビローリ/ハレ管のシリーズが登場していましたが交響曲第2番はパスされていました。このドラティの交響曲第2番は廉価盤で発売された最初のものだったのです。まだ、処分はしていないと思うのですが、どこかに紛れ込んでしまって見つけられませんでした。すっきりとした中にも、ダイナミックな演奏で本場のシベリウスを満喫出来たものでしたが、何故か世間からは評価されていなかった一枚です。発売元がRCAだったということもあるのでしょうかね。レコード店に行っても、コロムビアとかキングの1000円盤はよく見かけましたがRCAのものは余り見かけなかった記憶があります。

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 膨大な録音を残したドラティですが、もともと、ドラティのシベリウスはそんなに多くありません。小生の知る限りでは、交響曲第2番とこのEMIに残した交響詩の録音とマーキュリーに1960年6月に残した「悲しきワルツ」だけの様な気がします。シベリウスの交響詩というと、すぐに「フィンランディア」を思い浮かべますが、1892年の「伝説」から1925年の「タピオラ」まで、約30年にわたって12曲ほどの交響詩を作っており、シベリウスと交響詩との相性がいかに合っているかを窺わせます。個人的には、交響曲もシベリウスの場合交響詩の範疇に入るのではと感じています。特に交響曲第3番以降はそういうイメージで聴いてしまいます。なんとなれば、交響曲第7番なんか単一楽章ですから交響曲のタイトルが無かったら交響詩ですわな。

 さて、このディスクに収録されている作品はフィンランドの叙事詩文学である「カレワラ」に基づいていることでも知られています。第1曲目の交響詩「ルオンノタール」は、独唱パートが付いた交響詩ということが特徴の曲で、第4交響曲の完成直前の1910年ごろに作曲されています。ソプラノの歌のテキストは「カレワラ」からとられています。「カレワラ」は、フィンランドの庶民によって口伝によって語り伝えられてきた大韻律詩による英雄物語で、「カレワラ」の初めの部分である「世界の創造」譚をテキストとしています。「ルオンノタール」でのギネス・ジョーンズの歌唱は、原語のフィンランド語でシベリウス特有な精緻な世界を、その歌唱力で巧みに表現して、聴き応え十分です。

 

 第2曲目の交響詩「伝説」Op.9は、シベリウスの初期の傑作としてコンサートでもしばしば取り上げられている曲です。もともとは当時の大指揮者のカヤヌスの要請でアンコールピースとして作曲されたようですが、完成した作品は18分を超える大作になっています。組曲「4つの伝説」とは別の作品で、原曲のタイトルは「EN SAGA」です。当時はこの区別がつかなくて、混乱したものです。(^▽^;)ドラティとロンドン交響楽団との相性はばっちりで、このコンビはメジャーレーベルに数々の録音を残しています。でも、EMIにはこの一枚だけだったのは他にも、グローヴスやベルグルンド、ギブソンといった指揮者を抱えていたからなんでしょうかね。オーケストラビルダーとしても優れていたドラティならではの縦の線のピッシリと揃った演奏で、まさに抒情に相応しい演奏になっています。

 第3曲目の交響詩「夜の騎行と日の出」は、1907年に完成した作品で、あまり有名な曲ではないが、初めて聴くとその内容の充実さに驚かされます。交響曲第2番や交響詩「フィンランディア」などの初期の頃の分かり易い作風は、後期に入ると一転して、厳しく、しかも精妙な造形の作風へと変貌を遂げていますが、この曲は、作品番号的に見ても、ちょうど後期に入った頃の作品で、古典的な形式と、こまやかな動機、有機的なリズム感に溢れた傑作となっています。夜を徹して騎馬で走り続け、やがて鳥の声などに迎えられ、荘重な日の出を迎えるまでの光景がオーケストラの豊かな響きで表現される。ドラティは中庸なテンポながらメリハリの利いた構成でこの曲の疾駆感を上手く表現しています。

 第4曲目の交響詩「波の娘」は、シベリウスとしては珍しく、フィンランドの伝承文化には基づいてはおらず、ホメロスの神話から取られている作品です。これは、1913年に米国から招待を受け、渡米して自作品を指揮するために作曲されたためだということです。フルートソロの細やかな表情付けといい、弦の押さえた響きは、シベリウス特有の透明であると同時に静寂感に包まれた感覚が前面に打ち出され、当時のドラティ指揮ロンドン交響楽団の演奏の質の高さに脱帽させられます。



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