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オーマンディのベートーヴェン交響曲全集

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オーマンディのベートーヴェン交響曲全集

曲目/ベートーヴェン
<CD1>
[1]交響曲第1番 ハ長調 作品21*
[2]交響曲第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」
<CD2>
[3]交響曲第2番 ニ長調 作品36*
[4]交響曲第4番 変ロ長調 作品60*
<CD3>
[5]交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」
[6]交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
<CD4>
[7]交響曲第7番 イ長調 作品92+
[8]交響曲第8番 ヘ長調 作品93+
<CD5>
[9]交響曲第9番 ニ短調 作品125 「合唱」

*世界初CD化、+日本初CD化

【演奏】
ユージン・オーマンディ(指揮)
フィラデルフィア管弦楽団
[9]ルシーヌ・アマーラ(ソプラノ)、リリー・チューカシアン(コントラルト)、ジョン・アレクサンダー(テノール)、ジョン・マカーディ(バス)、モルモン・タバナクル合唱団[合唱指揮:リチャード・P・コンディ]

【録音】
[1]1965年3月24日
[2]1961年4月9日
[3]1962年10月17日
[4]1965年9月20日
[5]1966年2月14日
[6]1966年1月26日
[7]1964年4月27日
[8]1961年12月10日、以上フィラデルフィア、タウン・ホール
[9]1964年9月5日~29日、フィラデルフィア、フィラデルフィア・ホテル
ADD/STEREO

P&E:トマス・フロスト

SME SICC-1510

イメージ 1
 

 初CD化されたオーマンディのベートーヴェン交響曲全集です。記憶は定かではありませんが、多分一番最初にベートーヴェンの交響曲第5番、いわゆる「運命」を聴いたのはこのオーマンディの演奏でした。当時は25センチLPで発売されていて、運命が1曲だけ収録されていたと記憶しています。そして、これが「運命」と認識したのですが、やがて、この演奏がカラヤンの演奏と大きく違うことに気がつきました。まあ、聴いてみて下さい。

 オーマンディ/フィラデルフィア

 カラヤン/ベルリンフィル

 当時、運命の動機をフェルマータを使って長く引き延ばす演奏は主流でした。そして、提示部の反復をカットして演奏していたのはワルターやクレンペラーもこういう演奏をしていたのでその点では違和感はありませんでした。しかし、それを変えたのはカラヤンでした。カラヤン/フィルハーモニアの演奏からしてカラヤンは主題を引き延ばすこと無くたたみかけるように演奏し、かつ提示部を繰り返していました。この違いにびっくりしたものです。まあ、そういう印象があったのでオーマンディは古いタイプの指揮者という範疇で自分では捉えていました。

 この違いは大きく、この後ワルターも、クレンペラーも長く聴くことはありませんでした。当然、オーマンディもその範疇でしたからオーマンディのベートーヴェンは蚊帳の外でした。ただ、ベートーヴェン以外のオーマンディはなかなか惹き付けられるものがあり、レコード時代は結構購入したものです。

 CD化されて、オーマンディのベートーヴェンを聴いたのは、1000円の廉価盤で発売された交響曲第3番を購入したのが最初でした。ただし、購入したのはこれだけで、他の曲には興味がありませんでした。まあ、そうこうしているうちにオーマンディのベートーヴェンは忘れ去られていきます。ようやく全集として日の目を見たのが、このタワーレコードの企画による復活盤でした。ソニーも、ワルターやセル、そしてバーンスタインは積極的に全集をCD化して再発を繰り返していましたが、このオーマンディだけは蚊帳の外だったんですなぁ。

 オーマンディは1961年の交響曲第3番から初めて、1966年の第5番まで5年がかりで全集を完成させたことになります。面白いもので調べてみると、オーマンディはブラームスの交響曲全集も1960年代後半に完成させています。レコードのセールスはよかったのですが、CBSにはバーンスタインがいてそちらは録音の選択権があったので美味しい所を攫われるし、傍系のエピックではセル/クリーヴランドがドイツ・オーストリア系の主だったレパートリーは録音していたので、出る幕が無かったんでしょうなぁ。この時期はCBSから古巣のRCAへ鞍替えする寸前の時期だったのでこの二つの全集を置き土産的に録音したのでしょうかね。ちなみに、オーマンディは60年代は頻繁にウィーンフィルと共演しており、特にウィーン・フィルからは「古典派の大家」として評価され、盛んにベートーヴェンを取り上げていたようです。

 さて、この全集では第7番と8番が初めてCD化されています。これが、なかなか良い演奏であり録音です。ウィーンフィルで評価されていた演奏という意味がよく分かります。交響曲第7番の悠然としてテンポ設定は聴いていて心地よいものです。日本では第1楽章の方が有名になりすぎていますが、オーマンでい/フィラデルフィアの第2楽章は絶品です。ところで、CBS時代の録音会場は、「タウン・ホール」がよく使われています。この他にはブロードウッド・ホテルやアカデミー・オブ・ミュージックが使われていましたが、音響的にはやや問題があったようです。そんな訳で、フィラデルフィアサウンドはこのタウン・ホールで作り上げられたといってもいいようです。ただ、このホールあまり実態は分りませんでした。色々な資料を照らし合わせるとCBS時代の「タウン・ホール」は名前がコロコロと変わり、RCA時代には「スコティッシュ・ライト・カテドラル」と表記されているのですが同じ会場のようです。

 このホールはもともとは、舞踏会場であったらしく1926年建築の窓のほとんどない大きな建物で、1926席のオーディトリアムがあり、CBS時代の1962年~68年にここが録音会場となっていたということです。ただ、RCAに移籍した時にはこのホールはオフィスビルに変貌していて、その後フリーメイソンがこの建物を所有し「スコティッシュ・ライト・カテドラル」と命名したようです。まあ、今は駐車場になっていますけどね。

 オーマンディの演奏を聴いていると、全体の楽器の響きが見事にバランス良くブレンドされているのが分ります。そういう部分で耳障りがいいということになり、反面個性の無い演奏という事になってしまう部分があるのかも知れません。ただ、このノーブルなサウンドはひとたび聴き始めると癖になります。今回、比較の意味でカラヤンの演奏を取り上げましたがオーマンディの演奏を聴いた後でカラヤンを聴くと金管の刺々しさがやや耳につきます。

 第8番は全集の中でも一番早い録音ですが、オーマンディは得意としていたのでしょうか。セッション録音ではややゆったりめのテンポで演奏しています。しかし、音はゴージャスなのでオリジナルの2管編成を4管に拡大しているようです。実は、先のウィーンフィルとの相性の良さを裏付ける映像がYouTybeにありました。こちらも4管です。

 

 1963年6月9日のウィーンフィルとの演奏会の映像です。セッション録音よりはやや速めのテンポでキビキビとした印象があります。会場違いがテンポの設定を変化させているのでしょうかね。ここはムジークフェラインザールではなく、アン=デア・ウィーン劇場です。コンサート・マスター席には若き日のボスコフスキーの姿も見えます。こういう演奏を聴いていると、フィラデルフィアとの録音がその響きのバランスといいウィーンフィルと酷似していることが分ります。

 オーマンディのベートーヴェン、古き良き時代を偲ぶには恰好の全集かもしれません。α波全開で癒されること間違い無しです。たまにはこういうベートーヴェンもいいものです。



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