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知ってるようで知らない ジャズおもしろ雑学事典 ~ジャズ100年のこぼれ話~

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知ってるようで知らない ジャズおもしろ雑学事典 ~ジャズ100年のこぼれ話~

著者 小川 隆夫
発行 ヤマハミュージックメディア

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 この世にジャズが誕生して100年。こぼれ話を肴に今日もお気に入りのジャズを聴きましょう。ホントの話、おもしろい話、ヤバイ話…。知っているようで知らない、ジャズのおもしろ雑学はいかが?===データベース===

 ジャズは音楽の1ジャンルとしてよく聴きます。ただし、かなり中身は偏っています。まあ、元々が映画のバックで流れるものが気になって聴き始めたのがそもそもの出発点だから仕方が無いのかもしれません。そんなことで、体系的にジャズを知っている訳ではありません。ここんところがバックボーンのクラシックとはちょっと違う点でしょう。

 まあ、そんなこともあり、ちょっとはジャズの歴史をかじってみようかと目についたのがこの一冊です。まあショッキングな内容も含まれているんですなぁこれが。その一つがジャズの語源です。もともとは南部の黒人達が使っていた「セックス」を意味するスラングだったというのです。ただ、この語源の中で別の説も紹介されています。初期のアルバムで「Jass At Ohaio Union」というものが残っているそうなので、その「Jass」がなまって、「Jazz」になったというせつもあります。まあ、どのみちジャズが誕生してまだ100年というのはじじつのようで、それ以前はスコット・ジョップリンなどが演奏していた「ラグタイム」が原型にあるようです。ともあれ、次のような構成になっています。

第1章 不滅のクラシック・ジャズ時代 (1900年代初頭~1920年代半ば)
第2章 黄金のスイング時代 (1920年代後半~1930年代末)
第3章 ビバップ誕生 (1930年代末~1940年代)
第4章 クール・ジャズとウエスト・コースト・ジャズの奔流 (1940年代末~1950年代)
第5章 ビバップからハード・バップへ (1950年代)
第6章 フリー・ジャズから新主流派ジャズへ (1960年代)
第7章 フュージョンの席巻 (1960年代後半~1970年代)
第8章 現代のモダン・ジャズ (1980年代~1990年代)
第9章 ヒップ・ホップ~アシッド・ジャズへの誘い (1980年代中盤~2000年)
第10章 (番外編)日本のジャズ (1900年代初頭~1920年代半ば)

 世界中に愛されたジャズブレーヤーに「ルイ・アームストロング」がいます。トランぺッターでしたが歌も歌い、「この素晴らしき世界」何かは味のある歌です。さて、そのルイ・アームストロングですが、愛称は「サッチモ」と呼ばれていました。小生もアームストロングを知った初期の段階で既に「サッチモ」を承知していました。しかし、どうして「ルイ・アームストロング」が「サッチモ」なのかはまったく知りませんでした。雑学事典ですからこの本にはその由来も紹介されています。このサッチモという呼び名は比較的後年なことで1930年代に入ってからのことだそうです。それまでは「ディッパー(Dipper)」と呼ばれていたそうなのです。これは「借金王」的な意味合いがあったそうで、若い頃あちこちで借金を重ねていたからのニックネームでした。

 それが「サッチモ」に変わったのはヨーロッパへの演奏旅行で、イギリス「メロディ・メーカー」の編集者パーシー・ブルックスからこのニックネームで呼びかけられたのが始まりだとされています。その由来は、黒人特有の分厚い唇を意味する「サッチェル・マウス(Satchel mouth)から来ているようです。まあ、今なら差別用語だとして直ぐ批判にさらされるのでしょうが、アームストロングはそれを友情のユーモアと解したそうで、本人もそのニックネームが気に入っていたということです。いってみれば大らかな時代だったんでしょうなぁ。

 

 この手のエピソードと供にわかりやすくジャズの歴史が読物として紹介されています。ところが、著者の小川氏は1960年代まではなるほどと思わせる文章なんですが、これがフュージョンが台頭して来た1970年代以降となると、我々の世代がリアルタイムで知っているせいなのか、ちょっと見方が違うんじゃないのという内容に変化して来ます。まあ、フュージョンなんて語源のようにごちゃ混ぜの音楽ですからジャズ本流からすれば枝葉にすぎないのかもしれませんが、巨頭のマイルス・ディヴィスからしてこの傾向になだれ込んでいきます。この本ではマイルスの「ビッチェス・ブリュー」からそのフュージョンが幕開けします。もっとも、小生がマイルスのレコードを最初に買ったのはこの「ビッチェス・ブリュー」でした。ですから、小生のマイルス体験はロックのイディオムを取り入れたここが原点です。チック・コリアもそうで、「リターン・トゥ・フォーエヴァー」が出発点です。ただ、ここで登場する面々はメインストリームのアーティストばかりで、CTIに集ったメンツについては一言も触れられていません。そんなこともあって、これ以降はやや片手落ちの内容に終始しています。

 それでも、ウェザー・リポートについてはきっちりコラムで押さえられていて新しい発見がありました。あの名曲「ブラック・マーケット」がウェザー・リポートの曲だと初めて知ったのです。この曲は、寺井尚子の演奏で小生は知ったのですが、オリジナルが「ウェザー・リポート」とは知りませんでした。ただ、今聴いてもオリジナルより寺井尚子の演奏の方がしっくりくるのはやはり、原体験のせいでしょうかね。(^▽^;)


 
 この本では第10章に日本のジャズの歴史が書かれています。まあ、日本のジャズは世界にも影響力を持つもので、1970年代末になってブルーノートやヴァーヴなどのレーベルが活動を休止してしまいましたが、日本ではリスナーからの熱い支持がありレコードは売れ続けていました。そんなことで、1985年にブルー・ノートは復活しています。こういうこぼれ話もあり、ついつい惹き込まれる話も多くあります。もう一つ驚いたのはあのビートルズのリンゴ・スターがジャズのスタンダードを歌ったアルバムを発表していたということです。「センチメンタル・ジャーニー」というアルバムだそうですが、オリヴァー・ネルソンやエルマー・バーンスタインらの豪華アレンジのもと歌い上げているそうです。

 何はともあれ、ありきたりのジャズの名盤を羅列している本とは一線を画す内容で、これは楽しめます。



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