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ケン・ラッセルの「マーラー」

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ケン・ラッセルの「マーラー」

曲目
1. No. 10 in F sharp: Adadio (00:46)
2. No. 3 in D minor: Krutig, Entschieden (04:07)
3. No. 5 in C sharp Minor: Adagietto (04:25)
4. No. 4 in G: Beduhtig. Nicht eilen - Recht gemuhlich (01:41)
5. No. 3 in D minor: Lustig im Tempo und keck im Ausdruck (04:00)
6. No. 1 in D: Krutig bewegt (01:18)
7. No. 6 in A minor: Allegro enegrico, ma non troppo (01:53)
8. No. 7 in E minor: Allegro (02:35)
9. No. 3 in D minor: Comodo. Scherzando. Ohne Hast (01:14)
10. No. 5 in C sharp Minor: Trauermarsch (In gemessenem Schritt. Streng. Wie ein Kondukt) (01:07)
11. No. 1 in D: Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen (03:32)
12. No. 7 in E minor: Scherzo (01:57)
13. No. 3 in D minor: Krutig, Entschieden (03:15)
14. No. 5 in C sharp Minor: Schero (Kretig, nicht zu schnell) (01:41)
15. No. 9 in D minor: Im Tempo eines gemuhlichen Ledlers. Etwas topisch und sehr derb (03:20)
16. No. 6 in A minor: Allegro energico, ma non troppo (05:26)

指揮/ベルナルト・ハイティンク
演奏/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

UK Charisma ‎– CAS 1088

監督:ケン・ラッセル
製作:ロイ・バイアード
脚本:ケン・ラッセル
撮影:ディック・ブッシュ
音楽:グスタフ・マーラー、リヒャルト・ワーグナー、ダナ・ブラッドセル
編集:マイケル・ブラッドセル

出演:
Mahler . . . . . Robert Powell
Alma Mahler . . . . . Georgina Hale
Max . . . . . Richard Morant
Bernard Mahler . . . . . Lee Montague
Marie Mahler . . . . . Rosalie Crutchley
Hugo Wolfe . . . . . David Collings
Cosima Wagner . . . . . Antonia Ellis

イメージ 1
 

 1911年、ニューヨークでの仕事を終えウィーン行きの列車に乗っていた、51歳の高名な指揮者であり作曲家のグスタフ・マーラー。同行した妻アルマはまだ30代の女盛りで、夫への態度は醒めきっていた。グスタフはこの旅行中に未完の交響曲第10番を仕上げようとしていた。
脳内にフラッシュバックするイメージに断片……
彼の脳裏に、様々な過去が蘇ってきた……。---データベース---

 有名なルキノ・ヴィスコンティ監督の「ヴェニス死す」は同性愛的なシーンを盛り込んだ名作としてヒットしましたが同時期に制作されたケン・ラッセルのこの「マーラー」は日本では黙殺されました。製作された当時は、2作が共作のように映画雑誌には取り上げられていましたが、実際に公開されたのは「ヴェニスに死す」だけでした。まあ、内容が抽象的で悪魔的な幻想シーンが多いということでお蔵入りし、日本では1987年になってようやく公開されたという作品です。そんなことで、国内ではこちらはサントラ盤も発売されませんでした。そういう状況でも執念でしょうか。輸入盤のバーゲンセールのトラ箱の中で、このサントラを見つけました。一応クラシック盤のコーナーに置いてあったのですが、誰もこのジャケットを見てマーラーの作品と思わなかったんでしょうね。サントラですから、演奏者名も何も表には記載されていません。ジャケット裏にも実は大きくは記載されていません。最下段に、小さな文字で、
Music from the Mahler Symphonies performed by the Concertgebow orchestra,Amsterdam,conducted by Bernaed Haitink,by arrengement with Phonogrzm International B.V.
という記載があるだけで、曲名の紹介も何もありません。こんなんでは、サントラマニアでも余り気がつかないでしょうね。小生も、ジャケット表面のオリジナル・サウンドトラックという文字だけで勢いで買ってしまったものです。今調べると同時期にフランス盤も発売されていたようで、こちらは本家フィリップスからの発売ですから、ハイティンクの文字が大きく表示されています。敗ティンクのマーラーは余りいいセールスを記録していなかったのでこういうプロモーションは絶好の機会だったのでしょう。

イメージ 2


 こういう状況ですから、当時この作品がどんな映画かまったく知りませんでした。音のイメージだけでマーラーを追ったのですが、これが良かったんでしょうなぁ。このレコードでハイティンクのマーラーを知って、後にハイティンクのマーラー交響曲全集を購入してしまったんですから。言ってみればレコードはハイティンクのマーラー交響曲全集のサンプラーみたいな出来なんです。交響曲第2番と8番という声楽大作は含まれていませんが、その他は美味しい所をダイジェストに収録しています。もっとも、映画は他にワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」と「ワルキューレの騎行」などが使われていますが、このサントラではカットされていて収録時間は43分あまりとなっています。下はトレーラーです。


 映画は、ニューヨークからウイーンへ向かう車中のマーラーの頭に浮かぶ夢と妄想と記憶を描いています。冒頭、をイメージしたシーンを嵌めこんでいたと思うのですが、このあたりがケン・ラッセル監督の面白いところです。マーラーが時折ポップ・スターのように見えます。奥様はグルーピーという雰囲気もします。生い立ちから、改宗、妻の浮気などマーラーの人生をなぞりながら『マーラー』の音楽を描いてゆきます。 ただ、ケン・ラッセルにとっては同じ作曲家のリストの伝記映画でもある「リストマニア(1975)」でもそうでしたが、ワーグナーとナチズムが切り離せないようで、この作品でもマーラーがユダヤ人と云う部分もあって、ワーグナー=ナチズム、と云う構図が強く押し出ています。
物語としては、体調を崩しているマーラー(ロバート・パウエル)が、ウィーンへ向かう列車内で、過去の人生を回想すると云う感じです。妻アルマ(ジョージナ・ヘイル)との不和、弟オットーの狂気、迫りくるナチズムの予感、死に向かうかのような列車の旅で、映し出されるマーラーの人生を、ケン・ラッセルは彼らしい幻想的かつ悪夢的な映像で綴っていきます。

 

イメージ 3


 主演の俳優はマーラー役ロバート・パウエルで、芸術家の傲慢さと繊細さ、もろさ、絶望、ユダヤ人としてのアイデンティティを捨てねばならぬその彷徨感など、
うまく演じていると思います。妻アルマ役のジョージナ・ヘイルはいかにもイギリス的な女優さんと云う感じの容貌で、何を考えているか解らないクールな感じがよく出ていたと思いました。ある意味神秘的なにおいもするし、この作品のアルマのイメージには合ってました。コジマ・ワーグナー役のアントーニア・エリスはなかなかインパクトのあるオバサマでした。この映画、1シーンだけカメオ出演で、駅員役でオリヴァー・リードが出てます。この当時のケン・ラッセルの作品では、彼は1971年の「肉体の悪魔」と
この「マーラー」の後の1975年の「TOMMY」に出ていますから、探してみるのも面白いでしょう。

 ところで、ケンラッセルといえばチャイコフスキー、マーラー、エルガー、フランツ・リスト、ルドルフ・ヴァレンティノ、ワーズワースなど、実在の人物の生涯を多く映画化しています。ラッセルの作品の中でも人気があるのはチャイコフスキーの伝記映画の「恋人たちの曲/悲愴(1970)」すが、ここではゲイのチャイコフスキーを描いていました。この映画の当時は、チャイコフスキーがゲイだと云うのは定説ではなかったので、結構センセーショナルな映画ではなかったかと思うのですが、
伝記映画としてはある意味まっとうな作品といえます。まあ、映像は過激ですけどね。

 どういう風に過激かは、ご覧になったことが無い人はYouTubeにこの作品がありましたので、ちょいとのぞいてみて下さい。これで、小生のようにマーラーに嵌まるか、いやハイティンクに嵌まるかですかね。

 




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