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淡路坂-養生所見廻り同心神代新吾事件覚

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淡路坂-養生所見廻り同心神代新吾事件覚

著者 藤井邦夫
発行 文芸春秋 文春文庫
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 孫・良吉に付き添われ養生所に通っていた老爺・五平が若い侍に理不尽に斬り捨てられた。祖父の死を悲しむ良吉に、新吾は仇を討つと誓うが、調べを進めるうち、相手が情け容赦ない手練の人斬りだと判明する。権力の笠の下に逃げ込んだ相手に、新吾は命を賭した闘いを挑む。その方法とは?書き下ろし時代小説シリーズ第4弾。 ---データベース---

 小石川療養所を中心に話が展開するシリーズですが、そのために書き出しがよく似通ったものになってしまっています。そして、最初は「指切り」とか「花一匁」というような子供が登場する話で、ハッピィエンドで終わる形のものが多かったのですが、この巻ではそういう話がすっかり無くなっています。タイトル作品こそ子供が登場しますが、これとてここでは孫と老爺が侍に斬られます。

 ただ、進展としては新吾がそれまでのどちらかというと剣に頼らない、南蛮一品流捕縛術を駆使して敵と対峙していたのですが、この巻では義憤が爆発し「斬奸状」を作成し敵陣に乗り込んでいき剣を抜きます。もともと新吾は三廻り同心になるのが夢です。この事件がそのきっかけとなるのでしょうか。

 さて、この巻の章立てです。

●花曇り
●見舞客
●紫陽花
●淡路坂

 「花曇り」では飾り職人が博徒に身を落とし、いかさま細工の賽ころを作ったことから人殺しが発生し、その女を新吾が掬うという筋立てですが、ありふれています。浅吉はいいところで現われますが、最後まで絡まないという中途半端な描かれ方です。
 
 「見舞客」は恩人の仇を討つために江戸に戻った男を新吾が追います。それにしても殺される武士の不甲斐ないことといったら・・・次に狙われる人物まで見当が付いていながら、奉行所側は有効な手だてを打たないという失態です。最後は男も相対で死んでしまうという、新吾たちが居ても居なくても同じという結末では救われようがありません。

 「紫陽花」はがんに冒された父親と絶縁した娘の再会の話ですが、これも暗い話で、娘の夫がしょうもない男のため父親がその亭主を殺すという筋書きです。でもって、亭主の借金をチャラにするというなんか腑に落ちない展開です。

 「淡路坂」は紹介文にもある展開で、新吾が「斬奸状」をかざして悪徳御家人を成敗するというおよそ役人らしからぬ立ち居振る舞いを演じます。こんなことで役人が務まるのでしょうかね、という疑問符が付きいささか養生所見廻り同心を逸脱しています。



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