曲目/バルトーク
2台のピアノと打楽器と管弦楽のための協奏曲 Sz.115
1. Assai Lento 11:31
2. Lento, Ma Non Troppo 5:38
3. Allegro Non Troppo 6:35
ヴァイオリン協奏曲 第2番 Sz.112 *
1. Allegro Non Troppo 15:22
2. Andante Tranquillo 10:05
3. Allegro Molto 10:55
アーサー・ゴールド、ロバート・フィッツデイル(P)
ソール・グッドマン(ティンパニ)
エルデン・ベイリー、ワルター・ローゼンバーガー、モーリス・ラング(パーカッション)
アイザック・スターン(Vn)*
ソール・グッドマン(ティンパニ)
エルデン・ベイリー、ワルター・ローゼンバーガー、モーリス・ラング(パーカッション)
アイザック・スターン(Vn)*
指揮/レナード・バーンスタイン
演奏/ニューヨーク・フィルハーモニック
演奏/ニューヨーク・フィルハーモニック
録音/1966/05/14 フィルハーモニック・ホール
1958/01/26* マンハッタンセンター ニューヨーク
1958/01/26* マンハッタンセンター ニューヨーク
P:トマス・フロスト
SONY 88843013302-04
バーンスタインのCBS時代の管弦楽、協奏曲エディションの4枚目です。作曲家のABC順に並んでいるのでバルトークが続きます。多分人生でこれほどバルトークを集中的に聴くのは初めてのことです。個人的に最近でこそ、近現代のヴァイオリン協奏曲を聴くようになりましたが、それまではよくがんばってもブルッフやグラズノフ止まりでしたからねぇ。要するにバルトークのヴァイオリン協奏曲は初体験という訳です。また、「2台のピアノと打楽器と管弦楽のための協奏曲」という作品もこのCDで初めて知りました。
最初に収録されているのは「2台のピアノと打楽器と管弦楽のための協奏曲」ですが、こちらはこのコンビのCBS時代の晩年の録音です。バーンスタインはレコーディングに優先権を持っていましたから、カラヤンとの違いを出そうとしてこういう曲目をチョイスしたんでしょうか。この曲は1938年に初演が行われた「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」をオーケストラ版に編曲して、1940年に完成したものだそうです。
第1楽章では、バルトーク独特の、ピアノを打楽器的に使ったもので、そこにティンパニーやら木琴、小太鼓等の打楽器が入ってきて、かなり躍動的な変化に富んだ音楽です。オリジナルがあるのでそこからのイマジネーションでオーケストラ作品に仕上げているのでしょう。雰囲気としては代表作の「弦・打楽器・チェレスタのための音楽」に近しい物を感じます。バーンスタインのバルトークの録音の中では後年の物になるのでかなりシャープな録音で聴くことができます。まあ、そんなこともあってバーンスタインのバルトークの中では、面白さという点では最良の部類に入ります。
第2楽章はゆったりとした静かな曲で、打楽器のピアノの弱音の響きの中からここではピアノがもの悲しげなタッチで入って来ます。それが次第に音量を増していくあたりは、孤独の中から叫びを上げているようにも感じるところで、悪霊の世界のうごめきのように響きます。ティンパニのグリッサンドがそれをいっそう引き立てます。コーダでの木琴の響きが単音で叩かれる様はまるで、日本の拍子木のような響きに聴き取れます。
最後の第3楽章は、アレグロ・ノントロッポの指示通り快活なピアノと打楽器の掛け合いで開始されます。もともとが第1ピアノが四季を兼ねる構成の作品ですから、ここでは2台のピアノが縦横無尽に駆け回り、そこに打楽器が絡みながら添え物的に管楽器と弦楽が添えられています。この曲がマイナーに留まっているのはひとえに、弦楽が添え物程度にしか扱われていない点でしょうかね。
これに反して、録音が古いながらヴァイオリン協奏曲はステレオ初期ということもあってかなりセパレーションを強調した録音になっています。音は新しくマスタリングされているようですが、少々古さを感じさせます。演奏は、スターンはバルトークのヴァイオリン協奏曲第1番を蘇演させたことでも知られているようにバルトークを得意としていました。スターン、バーンスタインの両者とも30代後半から40代前半の若々しい覇気に満ちた演奏が何よりも魅力で、近・現代クラシック音楽に賭けた情熱と意気込みが伝わってくるような演奏です。
第1楽章から、ハープの分散和音に乗って艷やかではあっても骨太の音色のヴァイオリンが聴こえてきます。どことなく野趣溢れる響きは民族舞曲の採譜に打ち込んだバルトークらしさを感じます。この曲第1楽章のカデンツァに入る手前で、四部音が登場します。何のことかと調べると微分音という物だそうで、四部音は半音をさらに半分に割った音なんだそうです。知らない者が聴くと音を外したとか、音が安定していないなんて知ったかぶりをしそうですが、これをバルトークは楽譜に書いているんですなぁ。いゃあ、初めてそういう音を耳にしました。下の演奏では11分半ぐらいのところでその音を聴くことができます。さて、スターンの演奏、その部分も見事ですが、それに続くカデンツァも見事です。
そしてもバーンスタイン/NYPも、スターンと渡り合ってなかなか熱気のある演奏を聴かせてくれます。
そしてもバーンスタイン/NYPも、スターンと渡り合ってなかなか熱気のある演奏を聴かせてくれます。
第2楽章は、静寂な響きですが、なかなか叙情的です。新古典主義的な響きは叙情的で、舞曲的な調べに深みを加えています。この曲でも、ティンパニのグリッサンドが登場し幻想的な雰囲気を醸し出しています。スターンのヴァイオリンはここでも骨太で、低音弦が深く響くスターンの音色が魅力的です。
第3楽章は、バルトークらしさが一番出ているような音楽が流れます。第1楽章の旋律がちりばめられるという手法が使われていますが、高度に昇華されているので素人耳にはあまり聴き取れません。(^▽^
バルトークの指示はアレグロ・モルトながらこの演奏では疾走感が漂います。スターンの演奏はテクニック的には申し分無く軽々と弾いてしまうので技巧的な難しさはあまり感じさせませんが、実際には高度な技巧が必要なんでしょうなぁ。

バーンスタインのディスコグラフィを見ると、この収録は3日間のコンサートの最終日に録音されたことになっています。それも、時間的には3日目のコンサートの前に収録されています。まあ、本番さながらの通し録音だったのかもしれませんが、ユダヤ人同士の意気投合した演奏の割に、ちょっとオーケストラが遠慮したように聴こえるのは収録の方法に問題があったからなんでしょうかね。